Ruby My Dear

 

「モンクの部屋は台所に繋がっていた。それはフィンセント・ファン・ゴッホの絵から抜け出したような部屋で、まさに禁欲的そのものだった。ベッドが壁にくっつけられ、(簡易寝台という方が表現として近い)、窓がひとつ、そしてアップライト・ピアノ。それがすべてだ。私たち全員がモンクのベッドに腰を下ろした。子供たちのように、みんなで脚をまっすぐ前に伸ばして。上を見ると、モンクは天井にビリー・ホリデーの写真をテープで留めていた。ドアが閉められた。そしてモンクは私たちに背中を向け、ピアノを弾いた。
(中略)
彼は常に何か新しいことをしていた。彼はその日、のちに「ルビー・マイ・ディア」というタイトルをつけられる曲ーモンクの代表作とも言える素晴らしい曲だーを作っているところだった。私たちはその様子を聴いていた。曲にはまだ名前もついていなかった。私はそのメロディーがすっかり好きになって、「ああ、この曲にわたしの名前をつけてくれないかな」と思ったことを覚えている。たとえば「スウィート・ロレイン」とか。後日彼のところを訪ねたとき、セロニアスは私に言った。「あの曲は『ルビー、マイ・ディア』というタイトルに決まったよ」と。
「あら、そうなの」と私は言った。「ルビーって誰なの?」
「誰でもない」と彼は言った。「ただ名前の響きが好きだったからさ」

 

 

 

https://youtu.be/W39TdbJxGNY

 

 

https://youtu.be/PTo04N2DEqs