好きなポケカの話:「ニャスパー」「アルセウスVSTAR」「ミッシングクローバー」

ニャスパー(イヤーキネシス)』(C)

ニャスパー
うたた寝の超自然的な力を体現したエスパーネコ「ニャスパー
もちろんネコは眠りを司る 
 
ホミカ』だけでなく『のろいのおふだ』『ヨノワールしのこくいん)』『ガラルジグザグマ』『ガラルタチフサグマ』など、ダメカン(10ダメージ)をのせていくカードで思い出深いものがたくさんある
ダメカンが雨漏りのように、涙じみのように、少しずつ少しずつ盤上へ広がっていく、そういうデッキがいつも好きだ
そして、背後から積み木をくずすようなワザで、ダメカンデッキの切り札になれるのが、こんなネコだったこと、それがお気に入りだった 
 
ニャスパー』は、特性「ねこのしゅうかい」を持った『ペルシアン』、特性「ひきよせのうず」を持った『フィオネの存在なしには語れない 
【特性 ねこのしゅうかい】
このポケモンがいるかぎり、自分の場にいるワザ「ねこびより」を持つポケモンが使うワザに必要なエネルギーは、すべてなくなる。 

フィオネ

【特性 ひきよせのうず】

このポケモンがベンチにいるなら、自分の番に1回使える。相手のバトルポケモンをベンチポケモンと入れ替える(バトル場に出すポケモンは相手が選ぶ)。その後、このポケモンについているカードをすべてトラッシュし、このポケモンを山札の下にもどす。 
特に「ひきよせのうず」のおかげで、「イヤーキネシス」からは誰も逃げられず、どこにいても関係なくくらってしまう
当時、人の手(『ボスの指令』『グズマ』)を使うのではなく、超能力を持ったネコに全て壊してもらうことを夢見た
このやり方では、「フィオネ」のおかげで、本当に人(『ボスの指令』)が必要なく、それを大切に思った

ボスの指令
【サポート ボスの指令】
相手のベンチポケモンを1匹選び、バトルポケモンと入れ替える。 
道具や人間でポケモンを倒すことができないから、ポケモンポケモンの勝負というのが最終的にはポケカの本質だ
『ボスの指令』で相手のポケモンを引きずりだして倒すこともまたポケカのお約束だが、あまりにも手っ取り早すぎる 
 
ニャスパー』はあくびをしながら、その約束をさりげなく無視し、ポケモンの超自然的な力だけで戦わせてくれる、無人のファンタジーを象徴するカードに他ならなかった
 
 

アルセウスVSTAR』(F)

アルセウスVSTAR
あまりにも強すぎて、初めて見たときの衝撃でこれを超えるものは未だにない
アルセウスは「宇宙もまだない頃に最初に生まれたポケモンらしく、『アルセウスVSTAR』はまぎれもなくそれにふさわしい
 
このポケモンの好きなところは、
・強力なエネルギー加速(デッキを成り立たせるための「システム」側面)
 └しかも『アルセウスVSTAR』自身が無色、エネルギー加速も全色いけるから、タイプの別け隔てがないデッキ、多様性を成立させてくれる。普段なら一緒にいない別タイプのポケモンたち、これもまた共存させてくれる。
・1度だけありえない願いを叶えてくれる、信じがたい特性『スターバース』
・勝利を目指すのにわりと十分なダメージ
 └かなり十分ではなくわりと十分なところもまた、多様性を許してくれている
大ざっぱに言うとこんな感じ
 
そして、これらの力を一匹のポケモンが持ってくれていることは「恵み」としか言いようがない
アルセウスVSTAR』が神的な力を持ってくれていたおかげで、デッキを成立させるために必要な部分を、何か他のことをするためのカードに変えることができて、それによってはじめて、生まれるはずのなかったデッキたちが、宇宙の誕生のように、突然目の前に現れたんだった
当然のように誰もがそのことに興奮するべきだ

 

『ミッシングクローバー』(B)

ミッシングクローバー
今はなき幡ヶ谷のTSUTAYAで、10円のこのカードを見つけた
初心なポケカプレイヤーだったおれにも、このカードは絵に描いた餅としか思えず、一蹴した
とはいえとりあえず4枚買って、色んなカードを調べながら、「これをこうすれば…もしかして…」と模索し始めてもいた
一度始まると、終わることもない 
 
ポケカは6枚のサイド(横にウラで置くカード)を先にとり終わった方の勝ちで、サイドをとっていくには基本的に相手のポケモンをきぜつさせることが正攻法だ
『ミッシングクローバー』はグッズにも関わらずサイドがとれるすごい効果だが、誰もが絵空事だと無視した 
 
このカードの問題はざっくりいうと
・4枚も手札に持ってくるのはたいへん
・普通に戦った方が早い
など
 
おれは、あろうことか、攻撃せずに『ミッシングクローバー』だけでサイドを取るデッキを組もうとした
一度使ったあと、『ミッシングクローバー』を5回再利用して勝つというもの
こんなことはポケカを少しでも知っていたらありえない話だとわかるはずだが、おれは何もわかっていなかった
 
最初の方は『フラージェス(ワンダーギフト)』と『ダイゴの決断』などを使って再利用することを夢見ていたが、すぐにてんでだめだと諦めた 
 
【特性 ワンダーギフト】
自分の番に1回使える。コインを1回投げオモテなら、自分のトラッシュにあるグッズを1枚、相手に見せてから、山札の上にもどす。 

ダイゴの決断

 

【サポート ダイゴの決断】

このカードを使ったら、自分の番は終わる。自分の山札にある好きなカードを3枚まで、手札に加える。そして山札を切る。 
フラージェス』は2進化だが、たねの『フラベベが後攻最初の番から進化できる特性「ぬけがけしんか」を持っていて強かった
とはいえコインゲーなので、『イツキ』(チル手品師)に頼ったりもしたが、案の定ただチルいだけに終わった 
 
色んなポケモンやトレーナーズに頼ってみたが、だめだった
最終的にたどり着いたのが『ドリュウズ(たがやす)』と『ヌケニン(いのちのうつわ)』『アーゴヨンGX』『シルヴァディGX』『しまめぐりのあかし』『ジラーチプリズムスター』『バリヤード(パントマイム)』『ヤレユータン(さるぢえ)』『ヤーコン』などを使ったものだった 


最初の方は『ヤーコン』を使いつづけ、『ミッシングクローバー』は4枚揃ったら使い、山札がなくなるまで『ヌケニンがついたポケモンだけ場に用意していく
 
自分の山札がなくなったあとのおおよその流れは以下
①『アーゴヨンGX』のスティンガーGXを使ってお互いのサイドを3枚にする → 相手の番『しまめぐりのあかし』つきのアーゴヨンが倒されサイド3-2
② 『ドリュウズのたがやすを使ってミッシングクローバー4枚を山札に戻す(山札全てがミッシングクローバーに)→相手の番『ヌケニンつきの『ドリュウズ』が倒されれば依然サイド3-2、しまめぐりつきの『シルヴァディGX』が倒されたら3-1
③『ヤレユータン』特性で山札の上に『ジラーチプリズムスター』を仕込む
→ 『バリヤード』特性で『ジラーチプリズムスター』をサイドに仕込む →『シルヴァディGX』で山札を全て引く →『ミッシングクローバー』4枚使用してサイド2-2 → 『ジラーチプリズムスター』特性でサイド1-2 →ドリュウズたがやすでクローバー戻す
④次の番がくれば『シルヴァディGX』で山札を全て引き『ミッシングクローバー』使用で勝ち
 
致命的な穴はたくさんある
要するに何もかもてんでだめだった 
 
ポケカ友達もおらず、貧乏なのにプロキシ(カード印刷)も使わなかったおれは、いつも自分自身とポケカをしているようだった
そして宝箱の中身は空だと発見するためだけに全てを費していたことに気づき、呆然とした
『ミッシングクローバー』などなかったのだ
うすうす気づいてはいたが、諦められなかった 
 
ただ、不敵な笑みを浮かべる『ヤーコン』の顔を見るたびに、絵空事と言わざるを得ないおれの物語に寄り添ってくれたドリュウズやアーゴヨンシルヴァディたちの姿を思い出す
『ミッシングクローバー』が象徴するのはかないもしない夢を向こう見ずに追いかけた思い出だが、それ以上におれは、それが許されていたこと自体のほろ甘さに感動するのだ