Kanye West "My Beautiful Twisted Fantasy" トラック印象

 

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Dark fantasy 95
Can We get much higher?のフック

荘厳で大げさで派手でboldだ

最初の30秒でこのアルバムが大変なものになるという予感にうたれる
2verse目がいい
Looks like a fat booty Celine dion
Sex is on fire, I'm a king of leon-a Lewis
とか
Too many urkels on your teams that's why your wins low
カニエのラップの良さのベクトルは、他のどんなラップともちがう。
優れたラップではなく、やぶれかぶれで、だめで、剥き出しなもの。
ベースは凡庸(bogus)で進みながら、頻繁に急にすごくなってすごいスピード感で戻るのを繰り返す、その焦燥。
もろさ。ほろ甘さ。
特にこのアルバムにおけるカニエのラップは、馬鹿馬鹿しいのに、笑えなくて、逆に泣いてしまうかのようだけど、泣くことなど決してできない、といった味わい
それはビギーの歪んだ変奏でありDNAだと感じる
純粋な声のトーンが一番素晴らしい
最後終わったと思ったらまたフックになるとこも素晴らしすぎる

 


Gorgeous 95
素晴らしいトラックとギターの音。
単調な長い曲、でもラップが冴えていてずっと緊迫していて、最後の最後にレイクウォンの登場でにわかにビート感が溢れだし、大胆で洒脱な構成がすごい。
カニエのラップはジェイZとの「パリス」にある
No one knows what it means but it's provocative...it gets the people going
象嵌(ぞうがん)している

 


POWER 96
本当の意味でおれがカニエにハマったのはこの曲を聞いてからだ。
2verse目のrantingに衝撃を受けた。
身も蓋もなく、誰も追いつけないスピードで喋っている
Now I embody every characteristics of the egotistic
He know he so fucking gifted
I just needed time alone with my own thoughts
Got treasures in my mind, but couldn't open up my own vault
My childlike creativity, purity and honesty is honestly, being prodded by these grown thoughts
Reality is catching up with me
Taking my inner child I'm fighting for it custody
With these responsibilities that they entrusted me
As I look down at my diamond encrusted piece
この部分はカニエが書いたとは信じがたいくらいありえないほどすごく、衝撃だった
SNLからのdisrepectを受け取っての切り返しとして、この部分をディストラックとして考えたとき、
自尊心のフェーズがあまりにありえないところまできているものだから、相手がその気味の悪さに逃げ出さざるを得ないから不戦勝する、といった勝ち方
ヒップホップ的ではない、離れ業
このときのカニエの心境は、覚悟を決める決めないという境地を超えて、ただただ喋りつづけるために喋っているかのよう

Hookのno one man should haveのねばりけある響きもgood

 

 


All of the lights 85
このアルバムは悪趣味で、けばけばしくてばかばかしく、みにくくて、信じがたいほど悲しい
客演でかざりつけているがそれも虚しいということの演出に過ぎない。
この曲はその最たるもの
でもアルバム通して客演のみせ方はとにかくとても優れている
ヒップホップの客演の美学の集大成

 

 


Monster 96
これはカニエのベストトラック(ビート)と言わざるを得ない
大量のキック
おどろおどろしいGold digger魔改造
ラップの採点表
カニエ 90
めっちゃ良い
特にshe came up to me and said..のところが好き
Best living or dead hands down huh?(hands down=だんとつで)
という簡潔にまとめられたつかみも
ジェイ 85
ニッキミナージュ 100
ニッキミナージュ史上最高のシーンを演出するトラックの妙
一旦誰もいなくなったかのような
主演兼監督として、ビートメイカーとして
カニエの慎ましさと仕事人らしさ
ここの凄まじさによって、カニエのヴァースの自画自賛(ain't nobody cold as this/ do the rap and the track, triple double no assist)の信憑性をうらづける
その後の終わり方もクール

 

 


So Appalled 86
繰り返されるHookがいい
カニエ 88
最後のパラグラフが良い
ジェイ 86
虚しくて良い
プッシャ 85
竜頭蛇尾
サイハイダプリンス 84
最後のパンチラインがよくわからない

こういうやつやジェイはそれ単独では微妙なbarsもある

カニエと彼らの遠さを演出する

それよりもこのあとに一瞬出てくるハリウッドザコシショウみたいなやつがやばい

 


Devil in a new dress 90
一部のラップファンが泣いて喜びそうな曲という印象
カニエのVerse 2はずっと最高
リックロスのラップもかっこいい
彼のバースはこの曲とつながっていてかつ切れている
内容が関係ないように思えるし、カニエのラップとの間があいている
そのすき間が重要で、内容の距離と時間の距離が、カニエと世界との距離、孤絶された感じを強調する、おしゃれな構成になっている
結果的にRunawayへのプロローグになってる

 

 


Runaway 98
この曲は「ヒットソング」なるもののパロディ
ヒットソングのような顔をでっち上げて逆にそれを無効化している、身も蓋もなさについての現代美術
歌詞も、過激とかじゃなく、理解しにくいものになってる
内容が理解しにくいとかじゃなく、Radioで消費されることを拒絶してる、Radioで流れる歌の歌詞として想定されているものの枠からはみ出て、個人的で狂人的な前提の上にいつしか立っているから、一見Radio曲のように見えても、機能を失っていて、とうに目的がちがくなっている、やけっぱちなもの
ビートインまでの30秒間くらいのピアノも、アウトロの3分間のオートチューンも、本質がRadio friendlyじゃないからこその所業で、白眉
うまく説明できない
このアルバムもここからは事情が変わってくる
ポップス(ヒップホップ)とそうでないもの(個人的なもの、構造からはずれたもの)の境界みたいな
とにかくアウトロのオートチューンはシテ…コロシテ…って感じで圧巻
音楽史に残るどころじゃない

 

 


Hell of a life 94
Runawayが終わってこの曲が始まった瞬間オワタって感じになる
アルバムの前半とはラップの表情が全く異なっている
もっと意識的に剥き出しになって、「てい」をなしておらず、どうやってここに辿り着いたのかわからないような、どうやってこの人はしゃべりつづけているんだと驚きながら聞くような感じになる
闇落ちイリュージョン
でも最後には
I think I fell in love with a pornstar
Got married in a bathroom
Honeymoon on a dance floor
And got divorced by the end of the night
That's one hell of a life
と何となくまとめられる

 

 


Blame Game 96
もはや曲ですらない
2バース目の壮絶なナラティブ
You should be grateful for a n**** like me ever noticed you
Now you noticeable and can't nobody control you

I'm calling your bothers phone like "what was I supposed to do?"
Even though I knew he never told the truth
He was just gon say whatever that you told him to
At a certain point I had to stop asking questions

I heard he bought some coke with my money
That ain't right, girl

You always said "Yeezy I ain't your right girl"
"You'll probably find one of them I-like-art type girl"
バースのほとんどは声がピッチダウンされていて、何回聞いてもすさまじくて、息もできなくなりそうになる
そしてケータイ小説家みたいな人間の言葉を引用したあと、I can't love you this muchと繰り返して、そこからトラックはそのままでスムーズにコントへ移行するのだが、そのトランジションそのものが驚きにあふれている
彼女はいつものように電話にでなかったけど、何かの間違いで折返しの着信がきて、出たら電話越しに彼女と男の会話が聞こえた…という入り
内容的には誇張しすぎたバカな田舎者の男が「お前はどうしてこんな急に変わった(orエロくなったor洒脱になった)んだ」と彼女に問い詰めていて、彼女はそれに対してアンドロイドのように「yeezy taught me」としか返答しないというもの
最後は男が「…yeezy taught you well. Yeezy taught you well.」といっておわる
なんという

 

 


Lost in the world 〜 Who will survive in America
Runawayのあとは、ずっと突き抜けていって、燃え尽きて、ここからはエンドクレジットのような、「あの夏いちばん静かな夏」の最後にも似たアウトロへ
Who will...で全然関係ない人登場してスピーチしておわる
なんという構成
アルバム全体でみれば、さらに突き抜けていって、止まって、しらけた感じの拍手であっけなく終わる
このアルバムのむなしさ、けばけばしさ、ばかばかしさ、みにくさ、そしておもしろさは、アメリカそのものを象徴するかのようだと、今でも感じる